子宮頸がん:ワクチン普及団体 製薬会社の支援、未公表
毎日新聞 2015年02月20日 07時30分
◇「実質販促」指摘も
産婦人科医らで作る任意団体「子宮頸(けい)がん征圧をめざす専門家会議」が、製薬会社から2年間で7000万円以上の資金提供を受けていることを公表しないままワクチンの普及活動をすることに疑問の声が上がっている。民間の医薬品監視団体「薬害オンブズパースン会議」は「実質的に専門家会議を介した製薬会社のプロモーション(販売促進活動)になっており、製薬業界団体の指針に抵触する疑いがある」として、近く日本製薬工業協会(製薬協)に調査と改善措置を申し立てる。【清水健二】
◇2社7000万円
専門家会議は2008年、子宮頸がんの検診とワクチンの普及を目標に設立。野田起一郎・元近畿大学長が議長、日本医師会理事や日本産科婦人科学会理事長らが役員に就いている。事務局の所在地は公表していない。
主な活動は、啓発のセミナー開催やグッズ配布▽国際会議への参加▽子宮頸がん予防に取り組む団体の表彰−−など。副作用報告が相次ぎ13年6月にワクチン接種の呼び掛けが中断された後は、学会などと共同で接種再開を求める声明や要望書を出した。
専門家会議は収支を公開していない。だが、12年度分から始まった製薬会社の資金提供に関わる情報公開によると、12年度は子宮頸がんワクチンを国内で製造販売する製薬大手の英グラクソ・スミスクライン(GSK)と米メルク(MSD)の両日本法人から計3500万円、13年度はGSKの子会社とMSDから計3850万円の寄付を受けていた。
また、09年4月に退職したGSKの元ワクチンマーケティング部長が、11年1月から14年6月まで専門家会議と委託契約を結んでセミナーの講師などをしていたが、GSK社員だったことは明示していなかった。
一方、製薬協は会員企業を対象にした医薬品プロモーションの指針を策定し、有効性に偏らず副作用などの情報も公平に示す▽印刷物は社内審査を経たものだけを使う−−などの制約を設けている。指針の解説では、PR会社などを通して医療関係者に情報提供する場合も製薬会社名を明らかにするよう求めている。オンブズパースン会議の関口正人弁護士は「専門家会議の啓発活動は、ワクチンの販促との境界があいまい。指針の趣旨に沿って、製薬会社からの資金や労務の提供を開示すべきだ」と主張する。
関連項目
その他関連記事
ワクチンとお金 (33)
患者会・スポンサー製薬会社 (15)
ワクチンと犯罪 (6)
医療と犯罪 (13)
ファイザー 大学や医師らへの12年度支払総額は約240億円 対売上で4.6% 透明性GL受け公開
ツイート
