ツイより
一人でも多くの方に、 【是非一読を】お願いしたい寄稿。 “@toshi2133:
http://www.jca.apc.org/~okuyama/main/images/master201304v6.pdf … 浜先生・打出先生の「HPV ワクチンの効果と害」 このワクチンの害に気か付かない方は是非お読みになってください。”
HPV ワクチンの効果と害
打出喜義 *1,小林真理子 *2,浜六郎 *3,別府宏圀 *4
*1:金沢大学附属病院 *2:上六薬局
*3:NPO 法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)
*4:新横浜ソーワクリニック
はじめに
子宮頸がんは増加しているとされ
るが,死亡統計を分析したところ,
増加しているのは罹患率であり,死
亡率は微増であること,したがって,
死亡率をヒトパピローマウイルス・
ワクチン(HPV ワクチン)によって
下げることができる可能性は低い,
と考えるべき点を指摘した 1).
本稿では,HPV ワクチンによる
重篤な害反応の頻度を分析し,仮に
HPV ワクチンが子宮頸がんの死亡
率を低下させうると仮定して,その
重篤な害反応の規模は,効果とのバ
ランスから許容しうるかどうか,考
察を加える.
検討結果からは,救いうる死亡
率の数倍から 20 倍超の重篤な害反
応がすでに報告されており,報告も
れの多いと考えられるギラン・バレ
症候群や膠原病など遅発性の自己免
疫疾患を考慮すると,重篤な害反応
の頻度はさらに大きいと推察され
る.したがって,接種は中止すべき
であると考える.
1.HPV(ヒトパピローマウイルス)
と子宮頸がん
国立感染症研究所が作成しファ
クトシートによると,ヒトパピロ
ーマウイルス(HPV)は,主要キャプ
シド(L1)遺伝子の塩基配列の相同
性に基づいて,これまでに 100 以
上の遺伝子型に分類されている.約
40 種の遺伝子型は粘膜の病変から,
60 種は皮膚の病変から分離され,

それぞれ粘膜型 HPV,皮膚型 HPV
と呼ばれる.
粘膜型のうち少なくとも 15 種
(HPV16,18,31,33,35,39,
45,51,52,56,58,59,68,
73,82)は子宮頸がんから DNA が
検出され,高リスク型 HPV と呼ば
れている.高リスク型 HPV のうち
HPV16/HPV18 が, 海 外 の 約 70%
の子宮頸がん発生に関わっていると
推定されている2,3).
粘膜型 HPV は性行為を介して生
じる表皮の微小なキズから,生殖器
粘膜の基底細胞に侵入し,ゲノムが
核内エピゾームとして維持される潜
伏状態となる.
HPV の 潜 伏・ 持 続 感 染 が 子 宮
の頸管部で起こると,HPV 増殖時
に CIN1 と呼ばれる病変が生じる.
CIN1 は大部分が自然に治癒するが,
稀に HPV ゲノムが染色体に組み込
まれた細胞が生じて,高い増殖能を
持つことがある.このような異常
細胞が上皮内で占める割合が上昇
することで,子宮頸がんの前駆病
変(CIN2,CIN3)が生じ,さらに悪
性形質を獲得して基底膜から真皮へ
(上皮外へ)浸潤すると浸潤がんに進
行するとされる.がん化するには,
喫煙,HLA 型などが関与すると考
えられている.
なお,潜伏感染状態では HPV 抗
原は殆ど産生されず,免疫系から逃
れている.分化に連動する HPV 増
殖でも,作られるウイルスは微量で
粘膜表面に限定されることから,や
はり免疫系を強く刺激することはな
い.そのため感染者の血清中の抗
HPV 抗体価は一般に低い.HPV は
男性生殖器にも感染するが,感染部
位や生態は明らかにされていない
2,3).
先述したように,海外では途上
国も含めて子宮頚がん患者の約 70
%で,16 もしくは 18 型が検出さ
れている 2,3,6). 一 方, 日 本 で は,
Asato ら 4)によれば,調査した子宮
頚がん全患者を分母とすれば,43.8
%であった.また,この調査結果も
ふくめ,日本で子宮頸がん患者中の
16/18 型検出頻度を報告した 14 文
献を集計した Miura らの調査によ
れば,58.8%であったとしている.
日本におけるこの値は,サーバリッ
クスならびにガーダシルの審査結果
報告書にも引用されている.
したがって,「高リスク型 HPV
の う ち 16,18 型 の 約 70% が
子宮頚がん発生に関わってい
る.」というデータは日本では当ては
まらない.
日本で実施された最大の症例
対照研究報告 4) のデータを用い,
Asato らと同様の方法で各型別の子
宮頸がん発症危険度(オッズ比)とそ
の 95%信頼区間を求めた結果を図
1に示す.16,18 型だけでなく,
他にも多数の高リスクタイプがあ
ることが示されている.特に,31,
33,35,52,56,58,59,66 な
どがオッズ比で 20 を超えており,
高リスクである.このほか,39,
45,51,68 が海外では子宮頸がん
の高リスクウイルスとされている.
したがって,HPV 感染には多種
類の型があり 16,18 型を押さえ込
んだとしても,他の型に感染するこ
とは容易に想像しうる.
2.HPV ワクチンとは
日本で承認されているヒトパピ
ローマウイルス(HPV)ワクチンは,
16,18 型に対する二価ワクチンと,
それに 6,11 型を加えた四価ワク
チンがある.両者ともウイルスその
ものではなく,遺伝子組換え技術を
用いて HPV の L1 キャプシドタン
パク質を発現させ,ウイルス様粒子
(virus-like particles:VLPs)に再構成
したものを抗原として用いている.
両ワクチンの審査結果報告書3)を中
心に,HPV ワクチンとはどういう
ものか見ておく.
サーバリックス(グラクソ・スミ
スクライン:GSK 株式会社)は,1
回接種量 0.5 mL 中,有効成分とし
て昆虫(イラクサギンウワバ)細胞

を用いて発現させた L1 タンパク質
(HPV-16 L1 タンパク質 20 μ g ,
HPV-18 L1 タンパク質 20 μ g)を
含有し,AS04 と言われる新規の免
疫補助剤(アジュバント)として,水
酸化アルミニウム(アルミニウムと
して 500 μ g)とモノホスホリルリ
ピッド A(MPL)50 μ g が添加さ
れている.L1 タンパク質からなる
VLP を抗原とすることによりその
特異抗体を誘導し,AS04 を添加す
ることで持続的な高い抗体価及び特
異的な細胞性免疫の誘導を意図して
いる3a)とされる.
ガーダシル(MSD 株式会社)は,
0.5 ml 中に有効成分として,酵母
で発現させた HPV-6,11,16 ,18
型の L1 タンパク質 VLP をそれぞれ
20,40,40 ,20 μ g 含有する注射
剤で,これら VLP をアジュバント
であるアルミニウムヒドロキシホス
フェイト硫酸塩に吸着させた HPV
ワクチンである.初期製品では,経
時的な抗原性の低下が認められたこ
とから,安定性向上のため.L- 塩
酸ヒスチジン(局外規)や,ポリソル
ベート 80 及び高濃度の塩化ナトリ
ウムが添加された.このほか,ホウ
砂(日局)などの添加物も含有するア
ジュバントである 3b).
サーバリックスに含まれる MPL
は,グラム陰性菌の細胞壁成分で
あるリポ多糖類(LPS,別名エンド
トキシン)中でアジュバント作用を
担っているリピッド A を加水分解
して得られ,リピッド A のアジュ
バント作用を残し,毒性が軽減さ
れているとされている 7).この物
質は非発熱用量で特徴的な免疫賦
活 作 用(unique immunomodulatory
properties)を有するとされ,アルツ
ハイマー病動物モデルを用いたワク
チン開発にも応用されている 8).ま
た,ポリソルベート 80 は,薬物の
血液脳関門通過を容易にさせる目的
で用いられる添加剤である 9).した
がって,いずれの添加物も,脳への
影響を考慮するべき物質と言える.
通常のワクチンは免疫記憶をヒ
トに与えることにより,血中でウイ
ルスなどの増殖が起こることによる
感染症の「発症」を予防する.一方,
HPV は,感染しても血中で増殖す
ることはほとんどなく潜伏・持続感
染状態となるため,この HPV ワク
チンには「感染」そのものを「予防」す
ることが求められた.つまりこのワ
クチンは血清中の抗 HPV 抗体が生
殖器粘膜に滲出することで HPV 感
染を阻害するとされる新しいタイプ
のワクチンである 2,3).したがって,
自然感染ではありえないくらいに高
い HPV 抗体価を長期間維持するこ
とが求められ,免疫賦活のため,新
規アジュバント(他の新規添加剤を
含む)が重視されているのは,その
ためと考えられる.
また,HPV-VLP は,免疫反応の
出発点ともいうべき抗原提示細胞
「樹状細胞(dendritic cell: DC)」と強
く結合してこれを成熟させ,インタ
ーロイキン(IL-12,IL-6)や TNF-α
などのサイトカインを産生する 10).
その結果,中枢神経系(CNS)にも炎
症反応を生じ,脱髄や軸索損傷につ
ながりうると考えられている 11).
し た が っ て, こ の HPV ワ ク チ
ンは,VLP そのものの性質として,
また免疫反応を増強・持続させる目
的で添加されている新規アジュバン
トや新規添加物の影響も加わり,中
枢神経系や免疫システムへの影響が
懸念されるワクチンといえる.
3.有効性の表現方法は複雑
1) 現実には困難な条件での効果の
判定
HPV ワクチンの効果判定には,
解析集団とエンドポイントの設定
で,種々の解析方法が用いられてい
る.解析方法の設定によって,予防
効果が 100%という完璧な成績が
強調されている ( 表 2,表 3) 2,3,12).
添付文書でも基本的に同様の記載が

なされている.
しかしながら,たとえばガーダ
シルの場合,この結果の解析集団は,
PPE(Per Protocol Efficacy)であり,
ITT 集団ではない.
PPE とは,ガーダシルもしくは
対照の 3 回接種を 1 年以内に適切
な用量及び製剤で完了し,初回接種
日に血清抗体反応陰性,初回接種日
から 7 ヵ月まで PCR 検査陰性,お
よび,3 回接種後 1 ヵ月以降に 1
回以上の来院データがある被験者,
とされている.
本来の ITT 集団とは,1 回以上
接種を受けた人すべてであるべきで
あるが,その集団に関して有効性の
解析結果は示されていない.
最 も ITT 集 団 に 近 い の は,
MITT-3(Modified Intention To
Treat-3)集団であり,「1 回以上の
治験薬接種を受け,初回接種 1 ヵ
月後以降に 1 回以上の来院データ
がある被験者」と定義されている
3b).
PPE 集団による有効性解析では,
初回接種から 7 ヵ月以内に PCR 検
査でウイルスが陽性であった人を除
いている.したがって,接種時点で
すでに感染している人や,接種にも
かかわらず,この間に感染をして
PCR 検査でウイルスが陽性となっ
た,すなわち感染が阻止できなかっ
た人が除かれることになる.
したがって,7 カ月の時点で有
効である人のみを追跡するので,成
績が良くなるのは当然であろう.
MITT-2 は,「1 回以上の治験薬
接種を受け,初回接種日に血清抗体
反応陰性,PCR 検査陰性及び初回
接種後 1 ヵ月以降に 1 回以上の来
院データがある被験者」と定義され
ている.
2) MITT-3 解析集団が最も現実的
臨床試験対象者は,生涯の性交
相手が 6 人以下であると申告され
た女性であるため,すでに感染して
いる人が相当含まれているようであ
る.実際の接種には,性交未経験者
のみとするなら,少なくともこの
MITT-2 を用いることは可能である
が,承認された適応症として,「性
交未経験者」や「検査により HPV 抗
体陰性かつ PCR 検査で HPV 陰性」
との断り書きはないため,実際問題
としても,性交経験があり,検査
をすれば HPV 抗体が陽性あるいは
PCR 検査で HPV が陽性に出る人も
含まれよう.
したがって,MITT-3 による解析
が,現実に使用された場合の有効性
を反映していると考えるべきであ
る.
MITT-3 による解析結果の一つと
して,FDA に提出されたガーダシ
ルの臨床試験結果報告書13)の Table
4(本稿でも表 4)を引用する.
この表では,ガーダシルもしく
は対照(プラセボ)を接種した後,少
なくとも1回は受診して検査を受け
た人が解析対象となっている.エン
ドポイントは,HPV16 もしくは 18
型による CIN2/3 もしくはそれ以上
の組織異常のものである.これで比
較すると,予防率は 40.9%であっ
た.
3) サーバリックスでも同様
サーバリックスの場合も同様であ
り 3a,12a),プロトコールに準拠した
コホート /HPV 型判定アルゴリズム
として「ワクチンを 3 回接種し,プ
ロトコールに準拠した被験者のう
ち,1 回目ワクチン接種時(0 ヵ月
目)に血清抗体陰性,かつ 0 ヵ月目
及び 6 ヵ月目に HPV DNA が陰性の
被験者集団について解析した」(添
付文書)とされているため,前述し
たように,ガーダシルの場合とまっ
たく同様の問題がある.
サーバリックスの場合,ガーダ
シル臨床試験での MITT-3 に相当
する解析集団が明瞭に定義されて
い な い.TVC-1(Total Vaccinated
Cohort -1:TVC コ ホ ー ト 1)が,
MITT-3 に相当する場合と MITT-2
に相当する場合が混在している.ま
た,審査結果報告書 3a) や申請資料
概要 12a) で,MITT-2 に相当する解
析集団の組織病変に関するデータを
発見することはできたが,MITT-3
に相当する解析集団の組織病変に関
するデータを発見することができな
かった.
TVC-1 のうち接種前 HPV 陰性例
を対象として高リスクタイプが検出
された CIN2 に対する効果を見た場
合 (2) では,防止効果は全くなかっ
たと言える.接種時のHPVの状態
を問わない場合に,どの HPV で生
じても CIN-2 があった例で比較す
ると(5)ほとんど変わらず,むしろ
HPV ワクチンをした方がやや多い
ほどであった.
4) 既感染者には無効~逆に悪化
さらに,接種時にすでに DNA が
陽性かつ抗体も認められている例
(表 -5 の (6))では,CIN-2 病変は逆
に多かった.しかも p=0.0778 であ
り有意に近い.したがって,すでに
感染してしまっている人には全く効
果がないどころか,逆に悪化させる

サーバリックスで採用された解析集団の定義:
・TVC (Total Vaccinated Cohort:TVC コホート):少なくとも 1 回ワクチ
ンの接種を受けた集団=安全性の解析対象
・TVC-1(TVC コホート 1):上記 TVC のうちベースライン時の細胞診が
ハイグレード又は測定不能であった例.
・実際上は,TVC-1 のうち,0 ヵ月目の HPV-16 又は HPV-18 の HPV
DNA(PCR)が陰性であり 0 ヵ月目の細胞診で正常又は軽度異形成と判定
された全ての被験者(ガーダシルの MITT-2 解析集団に相当)が有効性評価
にしばしば用いられている.
・ATP コホート(ATP:According To Protocol):TVC-1 のうち,「試験ワ
クチンがプロトコールに従い接種されなかった」等の理由により除外され
た集団:有効性に関する解析集団
( 審査報告書 p46/73).いずれにしても,サーバリックスの試験におけ
る解析集団の定義は明瞭でない.


危険性がありうると考えられる.
4.HPV の型が変化する
特定のタイプに効果のあるワク
チンを接種すると,それまで優勢で
なかった別のタイプのウイルスや細
菌が優勢となることが,小児用の肺
炎球菌ワクチンで見られている 14).
最近報告された論文 15)で,HPV
ワクチンでも同様のことが起こる可
能性が示されている.HPV ワクチ
ン(ガーダシル)の集団接種開始前と
後の若い女性集団における HPV の
型を比較検討した結果,ワクチン集
団接種後には,ガーダシルが有効と
さ れ る 6,11,16,18 型 HPV を
持つ女性の率は有意に減少したもの
の,この型以外の HPV ウイルス感
染率が増加したため,結果的には
HPV ウイルス感染率は有意に上昇
し,その上昇は HPV ワクチンを接
種された女性においてさらに顕著で
あったと言うものである.
この結果は,HPV ワクチンを接
種した女性には,たしかに 6,11,
16,18 型の HPV 感染は少なくな
ったが,16,18 型以外のハイリス
ク HPV 感染までもが有意に増えて
しまったと言う驚くべき結果の報告
である.
実際,前述のサーバリックスの
臨床試験結果(表 -5 の(6))では,そ
れが直接的に示唆されている.また,
ガーダシル市販前臨床試験結果 13)
の Table 27 でも,HPV ワクチン接
種時,すでに HPV 感染可能性があ
る人にはガーダシルは無効でありう
ることが間接的にではあるが示され
ている(表 6).
加 え て, 同 資 料 13) の Table
17( 割愛 ) では,ワクチンが接種さ
れた時点で既にこれらワクチン型の
HPV ウイルスに感染していた人で
は,ワクチン接種後には CIN2/3 以
上の異型組織が 44.6% 増加してい
た.差は有意でないが,サーバリッ
クスの臨床試験結果(表 -5 の(6))と
一致する結果であった.
そこで,両者を併合すると,オッ
ズ 比 1.63 (95% 信 頼 区 間:1.07 -
2.49,P = 0.0291) と有意であった.
すなわち,ワクチン接種時にワ
クチン型の HPV に感染していた場
合には,がん化が促進される可能性
が疑われる.この資料の作成者は,
ワクチン接種群の細胞異型率がやや
高かったことをその理由としてあげ
ているが,サーバリックスでも同様
の結果が得られているので,同型の
ウイルス様粒子やアジュバントの作
用によって悪化させた可能性を考え
る必要があるのではないか.
5.HPV ワ ク チ ン の 害 反 応 プ ロ
フィール
図 2 は,HPV ワクチン使用後の
害反応の臓器・系統別の構成割合
を,海外 6)と,日本の2製品の報告
とで比較したものである.日本のデ
ータは,サーバリックスおよびガー
ダシルの市販後副反応報告のまとめ
17,18)から,臓器別に抽出し,全症状
数に占める臓器・系統別の副反応の
割合(%)を求めた(企業報告と医療
機関からの直接報告を合計したも
の).一見して明らかなことは,各
国で比較しても HPV ワクチンの害
反応プロフィールがきわめて似てい
ることであり,特に精神神経系と全
身・注射部位の害反応が多い点が注
目される.HPV ワクチン害反応の
もう一つの特徴として指摘されるの
が,ギラン・バレ症候群や橋本病な
どの自己免疫性疾患が散見されるこ
とだが,この分析はそのような視点
でまとめられてはいない.特に日本
の市販後調査は,図3に示すように,
接種後数日以内に起こった害反応報
告が大部分なので,自己免疫疾患な
どの遅発性反応は害反応と気づかれ
ずに報告漏れとなっている可能性が
大きい.
図 3 は,日本の市販後調査(サー
バリックス,ガーダシル)から,接
種後の重篤害反応例のうち接種日と
発症日の記載があり,発症までの期
間が判明している例 17,18)(ただし企
業からの報告例のみ)599 人の接
種から発症までの期間の分布を求め
て図示したものである.その大部分
(80%)は接種当日の反応で,接種
後 2 週間以後の例が 2.5%と極めて
少ない.
表 7 は,ガーダシルの海外臨床
試験において,半年間の追跡調査で
観察された自己免疫性有害事象 6,16)
と,日本における HPV ワクチンの
市販後副反応報告(予防接種法に基
づく全数調査ではなく薬事法に基づ
く自発報告)のまとめ 17,18)から,自
己免疫疾患を抜き出し(企業報告と
医療機関からの直接報告を合計し
たもの),企業からの報告による接
種者数を分母として,10 万人あた
りの頻度を比較して示したものであ
る.海外の臨床試験中の有害事象報
告(前向き調査)と日本の市販後自発
報告の比較であり、収集方法の違い
が反映されていると考えられるが,
日本では害反応情報の重要な部分が
欠落していることは,この表からも


明らかである.たとえば,表7をみ
ると,関節痛 / 関節炎関連の有害事
象が,海外ではガーダシル群も対照
(アジュバント)群も 10 万人当たり
1000 人規模で報告されているが,
日本では 10 万人当たり1人程度で
ある.
なお,ここで特に指摘しておか
なければならないことは,海外試験
でガーダシルの対照とされた群に
は,その製品に含まれているアジュ
バント ( アルミニウム:AAHS) のみ
を注射しており(一部には生理食塩
液を注射した群もあるが,これは少
数),HPV ワクチン ( 含有するアジ
ュバント成分も含めて)の安全性を
検証する意味では,真の対照群とは
言えないことである.このため,表
7に見るとおり,HPV ワクチン群
と対照群との間には,自己免疫性疾
患の発現頻度に大きな差はなく,む
しろ対照群に害反応が多い箇所もあ
る.メーカーおよび規制当局が自己
免疫性疾患の発現を因果関係不明と
して棄却したことの妥当性を今一度
検証し直す必要がある.アジュバン
トに関する問題は,次の総合的考察
でさらに詳述するが,自己免疫性疾
患についてはまた次の機会に取り上
げることにしたい.
6.HPV ワクチンの害に関する総
合的考察
HPV ワクチンに重篤な害反応の
頻度が多い原因には,いくつか考
えられる.先述のごとく,HPV ウ
イルス様タンパク質(HPV-VLP)そ
のものが「樹状細胞(dendritic cell:
DC)」と強く結合し,IL-12 や IL-6,
TNF- αなどの炎症性サイトカイン
を産生し,神経系を含め自己免疫
疾患を誘導する可能性 11)とともに,
免疫反応を増強・持続させる目的で
添加されている「アジュバント」の影
響が考えられている.
ここでは,特にこのアジュバント
の影響について考察を加える.
ガーダシル市販前臨床試験にお
いて,ワクチン接種後 1 ~ 5 日に
注射部位にみられた害反応をみる
と,疼痛が 83.9%と最も多く,次
いで腫脹,発赤であった.ところ
が,VLP を含まないアジュバント
だけでも,その 75.4%に疼痛の害
反応が起きていた.生理食塩水では
48.6%に疼痛が認められたが,注射
の後に持続する腫脹や掻痒感は,生
理食塩水の群に比し,HPV ワクチ
ンとアジュバント注射群で 2 倍以
上観察された6).
アジュバントによって引き起
こ さ れ る 自 己 免 疫 疾 患 は,“ASIA
:Autoimmune /inflammatory
Syndrome induced by Adjuvants”と
呼ばれて注目され 22,23),多くのワク
チンに含まれるアルミニウムなどに
よって引き起こされた免疫異常が原
因となって生じる疾患である.
同様の免疫異常は,アジュバン
トだけでなく,ウイルスや細菌感染
によっても生じる.サーバリックス
のアジュバントの一つ MPL が,エ
ンドトキシン(LPS)の成分リピッド
A の誘導体であることからも推察さ
れるように,ウイルスや細菌そのも
のもアジュバント作用を有しながら
炎症を起こしているとも考え得るだ
ろう.
このように「ASIA」は一般の生活
の中で「突然」に発症するため診断は
難しく,その頻度は実際よりも遥か
に高いと考えられている 22,23).その
診断の大基準としては,(1)臨床症
状発現前に感染,ワクチン,シリコ
ン,アジュバントのきっかけがあっ
た,(2)典型的臨床所見として,(a)
筋痛,筋炎,筋力低下,(b) 関節痛
や関節炎, (c) 慢性疲労,寝てもす
っきりしない,睡眠障害,(d)(特
に脱髄による)神経学的徴候,(e) 認
知障害,記憶障害, (f) 発熱,口内
乾燥,(3)原因除去による改善,(4)
当該部位の典型的病理所見,が挙げ
られているが 22)自己免疫性疾患は
その標的となる組織・臓器が異なれ
ば,現れる症状も変わるため,さら
に多彩な内容が含まれる可能性があ
り,因果関係の判定に当たっては柔
軟な視点が求められる.
7.HPV ワクチンの効果と害のバ
ランス
HPV ワクチン接種が有用か否か
を判断するために最も重要なデータ
として,子宮頸がんによる死亡率
と HPV ワクチン接種で起こる重篤
反応発生率を,データをもとに推定
し,得られる利益と害を比較し,表
8に示した.
1) ワクチンで死亡は最大どれくら
い予防できるか
米国,オーストラリア,オラン
ダの子宮頸がんの死亡率(A)(人口
10 万人対)は, 1.7 ,1.4,1.5 人6),
日本では 2.1 人(部位不明を比例配
分で算定すると 2.6 人)1)で,これ
ら 3 国に比べ,日本の子宮頸がん
死亡率はやや高めである.その一因
として,日本の子宮頸がん検診率が
欧米に比し 20% 台と低いことが挙
げられるかも知れない.
審査結果報告書 3a,b) や 国立感染
症研究所2)などの資料によれば,海
外では,子宮頸がん中の 16 型と
18 型 HPV の検出割合が 70%であ
ることから(表 1 参照),HPV ワク
チン接種により,16 型と 18 型の
子宮頸がんがすべて防止できたと仮
定すれば,その予防効果は,最大で
子宮頸がん死亡率(A)の 70% と期
待されている.
一 方, 日 本 で は, 審 査 結 果 報
告書 3a,b) でも引用されているよう
に,14 件 の 文 献 報 告 を 集 計 し た
Miurara(2006) の報告 5) によれば,
子宮頸がん患者中に 16 型と 18 型
が証明された割合は 58.8%であっ
た.そこで,海外の子宮頸がん死亡
率(A)には 0.7 を乗じ,日本の死亡
率(A)には 0.588 を乗じたものを子
宮頸がん最大予防可能死亡率(B)と
した.その結果,米国,オーストラ
リア,オランダ,日本で,それぞれ,
10 万人当たり,1.2,1.0,1.1,1.2
(1.5)人であった.
接種時に HPV 抗体が陰性で,接
種 後 6 ~ 7 ヵ 月 間 を 通 じ て PCR
法 で HPV が 陰 性 で あ っ た 人 で は
16/18 型 HPV による CIN2/3 の予
防効果は 90%を超えていたことか
ら,予防しうる子宮頸がんは,上記
に近いと考えられる.しかしなが
ら,実際の接種現場では,検査をす
るわけではないため,ガーダシルの
臨床試験で採用された,MITT-3(少
なくとも 1 回接種し,1 ヵ月後受診
した人)を解析対象とした場合の予
防率は,40.9%であった(サーバリ
ックスについては全く同様に考慮で
きる数字が発見できなかったので,
40.9%を準用する).
したがって,これを考慮すると,
表 8 には示していないが,さらに防
止が期待できる子宮頸がん死亡率は
少なく(表示の 40.9%)となり,10
万人あたり 0.5(0.6)に過ぎなくな
る.
2) 重篤な害反応の頻度計算のため
の分母
HPV ワクチン接種による重篤害
反応の頻度を求めるためには,この
ワクチンが何人に接種されたか,そ
の実数(あるいは推定値)が必要であ
る.日本では,この実数を求める
ことは困難とされ,2013 年 3 月の
HPV ワクチンの副反応報告書 6ab)
によれば,販売から 2012 年 12 月
までの出荷数,接種延回数,推定接
種者数は,サーバリックスが 684
万 回 分,546 万 回,273 万 人, ガ
ーダシルでは,それぞれ,145 万
回分,109 万回,69 万人であった.
なお,サーバリックスでは,1人あ
たりの平均接種回数を 2.5 回と仮定
して出荷数量から,ガーダシルでは,
1人あたりの平均接種回数を 2.1 回
と仮定して医療機関納入数量より推
計したとされている.
海外のデータは,実接種者数の
推定が困難として,米国とオース
トラリアでは出荷数(3500 万回分,
600 万回分),オランダでは延接種
回数(19.2 万人)を分母にして,便
宜的に重篤害反応の発生率が示され
ている 6).しかしながら,出荷数や
接種延回数を分母とすると各人当た
りの重篤害反応の頻度は過小評価さ
れることは,日本のデータから明ら
かである.
このワクチンは1人に3回の接
種が勧められており,1 人あたり
平均接種回数は最大で 3 人であり,
日本のデータ平均 2.1 ~ 2.5 回は実
際上の接種回数として妥当と思われ
る.このデータは日本のデータであ
り,もとより海外での 1 人平均接
種回数を推定したものでもなく,サ
ーバリックス (2.5 回 ) とガーダシ
ル (2.1 回 ) が,海外でも適用でき
るという根拠はない.しかしなが
ら,出荷数や,接種延回数を分母と
するよりは,その中間の平均接種回
数 2.3 回として推定した接種実人数
を用いた頻度の方が,はるかに根拠
があると考える.この考えで推定し
た接種人数 10 万人当たりの重篤害
反応の頻度を表 8に示した.
3) 重篤な害反応の頻度計算のため
の分子
重篤害反応の人数は,製造販売
業者からの報告と医療機関からの報
告を合計したものとした.
HPV ワクチンの接種事業では,
接種との因果関係の有無に関わら
ず,「接種後の死亡,臨床症状の重
篤なもの,後遺症を残す可能性のあ
るもの」に該当すると判断されるも
のを報告対象としている.ここでの
「重篤」とは,死亡,障害,それらに
繋がるおそれのあるもの,入院相当
以上のものとされているが,必ずし
も重篤でないものも「重篤」として報
告されるケースがある.
製造販売業者からの副反応報告
は,薬事法第 77 条の 4 の 2 に基づ
き「重篤」と判断された症例について
報告されたものであるが,医療機関
からの報告と製造販売業者からの報
告には重複の可能性が指摘され,そ
の後の調査等によって,報告対象で
ないことが確認され報告が取り下げ
られた症例が含まれる可能性もある
20ab)とされる.
薬事法第 77 条の 4 の 2 に基づ
き「重篤」と判断された症例とは,予
防接種制度で収集される例とは異な
る.すなわち,予防接種後に収集さ
れる例は,「予防接種後に一定の症
状が現れた者については,因果関係
の有無にかかわらず幅広く報告」さ
れることが原則である.しかし,薬
事法に基づく場合は,少なくとも,
医師が「因果関係がありうる」と考え
た害反応例であり,医師が因果関係
を疑わなかった場合は,決して報告

ら 3 国に比べ,日本の子宮頸がん
死亡率はやや高めである.その一因
として,日本の子宮頸がん検診率が
欧米に比し 20% 台と低いことが挙
げられるかも知れない.
審査結果報告書 3a,b) や 国立感染
症研究所2)などの資料によれば,海
外では,子宮頸がん中の 16 型と
18 型 HPV の検出割合が 70%であ
ることから(表 1 参照),HPV ワク
チン接種により,16 型と 18 型の
子宮頸がんがすべて防止できたと仮
定すれば,その予防効果は,最大で
子宮頸がん死亡率(A)の 70% と期
待されている.
一 方, 日 本 で は, 審 査 結 果 報
告書 3a,b) でも引用されているよう
に,14 件 の 文 献 報 告 を 集 計 し た
Miurara(2006) の報告 5) によれば,
子宮頸がん患者中に 16 型と 18 型
が証明された割合は 58.8%であっ
た.そこで,海外の子宮頸がん死亡
率(A)には 0.7 を乗じ,日本の死亡
率(A)には 0.588 を乗じたものを子
宮頸がん最大予防可能死亡率(B)と
した.その結果,米国,オーストラ
リア,オランダ,日本で,それぞれ,
10 万人当たり,1.2,1.0,1.1,1.2
(1.5)人であった.
接種時に HPV 抗体が陰性で,接
種 後 6 ~ 7 ヵ 月 間 を 通 じ て PCR
法 で HPV が 陰 性 で あ っ た 人 で は
16/18 型 HPV による CIN2/3 の予
防効果は 90%を超えていたことか
ら,予防しうる子宮頸がんは,上記
に近いと考えられる.しかしなが
ら,実際の接種現場では,検査をす
るわけではないため,ガーダシルの
臨床試験で採用された,MITT-3(少
なくとも 1 回接種し,1 ヵ月後受診
した人)を解析対象とした場合の予
防率は,40.9%であった(サーバリ
ックスについては全く同様に考慮で
きる数字が発見できなかったので,
40.9%を準用する).
したがって,これを考慮すると,
表 8 には示していないが,さらに防
止が期待できる子宮頸がん死亡率は
少なく(表示の 40.9%)となり,10
万人あたり 0.5(0.6)に過ぎなくな
る.
2) 重篤な害反応の頻度計算のため
の分母
HPV ワクチン接種による重篤害
反応の頻度を求めるためには,この
ワクチンが何人に接種されたか,そ
の実数(あるいは推定値)が必要であ
る.日本では,この実数を求める
ことは困難とされ,2013 年 3 月の
HPV ワクチンの副反応報告書 6ab)
によれば,販売から 2012 年 12 月
までの出荷数,接種延回数,推定接
種者数は,サーバリックスが 684
万 回 分,546 万 回,273 万 人, ガ
ーダシルでは,それぞれ,145 万
回分,109 万回,69 万人であった.
なお,サーバリックスでは,1人あ
たりの平均接種回数を 2.5 回と仮定
して出荷数量から,ガーダシルでは,
1人あたりの平均接種回数を 2.1 回
と仮定して医療機関納入数量より推
計したとされている.
海外のデータは,実接種者数の
推定が困難として,米国とオース
トラリアでは出荷数(3500 万回分,
600 万回分),オランダでは延接種
回数(19.2 万人)を分母にして,便
宜的に重篤害反応の発生率が示され
ている 6).しかしながら,出荷数や
接種延回数を分母とすると各人当た
りの重篤害反応の頻度は過小評価さ
れることは,日本のデータから明ら
かである.
このワクチンは1人に3回の接
種が勧められており,1 人あたり
平均接種回数は最大で 3 人であり,
日本のデータ平均 2.1 ~ 2.5 回は実
際上の接種回数として妥当と思われ
る.このデータは日本のデータであ
り,もとより海外での 1 人平均接
種回数を推定したものでもなく,サ
ーバリックス (2.5 回 ) とガーダシ
ル (2.1 回 ) が,海外でも適用でき
るという根拠はない.しかしなが
ら,出荷数や,接種延回数を分母と
するよりは,その中間の平均接種回
数 2.3 回として推定した接種実人数
を用いた頻度の方が,はるかに根拠
があると考える.この考えで推定し
た接種人数 10 万人当たりの重篤害
反応の頻度を表 8に示した.
3) 重篤な害反応の頻度計算のため
の分子
重篤害反応の人数は,製造販売
業者からの報告と医療機関からの報
告を合計したものとした.
HPV ワクチンの接種事業では,
接種との因果関係の有無に関わら
ず,「接種後の死亡,臨床症状の重
篤なもの,後遺症を残す可能性のあ
るもの」に該当すると判断されるも
のを報告対象としている.ここでの
「重篤」とは,死亡,障害,それらに
繋がるおそれのあるもの,入院相当
以上のものとされているが,必ずし
も重篤でないものも「重篤」として報
告されるケースがある.
製造販売業者からの副反応報告
は,薬事法第 77 条の 4 の 2 に基づ
き「重篤」と判断された症例について
報告されたものであるが,医療機関
からの報告と製造販売業者からの報
告には重複の可能性が指摘され,そ
の後の調査等によって,報告対象で
ないことが確認され報告が取り下げ
られた症例が含まれる可能性もある
20ab)とされる.
薬事法第 77 条の 4 の 2 に基づ
き「重篤」と判断された症例とは,予
防接種制度で収集される例とは異な
る.すなわち,予防接種後に収集さ
れる例は,「予防接種後に一定の症
状が現れた者については,因果関係
の有無にかかわらず幅広く報告」さ
れることが原則である.しかし,薬
事法に基づく場合は,少なくとも,
医師が「因果関係がありうる」と考え
た害反応例であり,医師が因果関係
を疑わなかった場合は,決して報告の死亡率を推定する必要がある.
こうして得た子宮頸がんの年齢
階級別年次推移を,図2に示す.た
とえば,子宮頸がんの場合,40 歳
台前半(40 ~ 44 歳)では,人口 10
万 人 当 た り 死 亡 率 は,1958 年 に
16.3 人,70 年 10.7 人,80 年 4.1 人,
83 年には 2.9 人に減少し,その後
は 10 年以上にわたり 3 人前後で推
移し,97 ~ 04 年は 3.5 ~ 4.2 台,
05 年以降は 4.0 ~ 4.6 程度と微増
している.
子宮頸がん現在の死亡増加は「微増」
最近では,「30 代女性の子宮頸
がんが増加しているので HPV ワク
チンを」1) という考えが,ワクチン
接種を推進する理由の根拠として主
張され,公費負担が当然のことのよ
うに主張され,一般にも信じられて
いるようである.
しかし,「30 歳代女性での子宮
頸がん増加」が著明なように見える
のは,罹患率 1) であって,死亡率
はかろうじて微増である(図 2).
むしろ顕著であるのは,図1で
示したように,戦後から 1980 年頃
までの子宮がんの減少傾向である.
一般の感染症の減少ほど急速ではな
いが,ややそれに遅れて減少してい
るようにみえる.胃がんの原因とし
て,ヘリコバクター・ピロリ感染の
関与が確立している5).したがって,
胃がんの減少についても,感染症の
減少(あるいは感染に伴う合併症の
減少)に伴うがん死亡の減少が考え
られる.この点で,胃がんの減少と
子宮がんの減少の共通性をみること
ができよう.
頸がんと体がんは同じ傾向-脂質摂
取量と逆相関
戦後,日本の人々の暮らしは大
きく変化した.特に食生活の改善が,
戦後の感染症の減少に大きく関与し
ていると考えられている.
そこで,「国民健康・栄養の現状
(2009 年版」6) より,各種栄養摂取
量を抜粋したのが図 3 である.タ
ンパク質や脂質の摂取量と,子宮が
ん死亡率は,ちょうど鏡像のように
変化している.とりわけ,脂質総摂
取量や動物性タンパク質と関係が強
そうである.
そこで,子宮頸がんの各年齢別死
亡率と脂質摂取量(総量および動物
性),タンパク質摂取量(総量およ
び動物性)との相関係数を求め,表
1,図 4に示した.栄養調査の値が,
おおむね 5 年毎であったので,子
宮頸がん,子宮体がんについては,
各年の前後 5 年間の平均値を計算
して比較した.
その結果,70 歳以上と 15 歳未
満を除いて,相関係数の平均値をと
ると,子宮頚がんは脂質総量との相
関が最も強く(r= -0.936),つい
で動物性タンパク質(r= -0.919)
と動物性脂質(r = -0.901)が続く.
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